【―a virgin―5、6】
少し微笑んだカーリーに、ニックが焦れたように訊く。
「なあ、だから……いいだろ?」
「うん…」
ニックは体をずらし、カーリーの下着に手を掛ける。
両手で脱がしていくと、透明なカーリーの体液が糸を引くのが見えた。
「ああ…、綺麗だ」
感嘆して爪先から下着を抜き、膝頭から手を入れようとする。
カーリーは膝を合わせ、少し力を込めて閉じてしまった。
「頼むから、舐めさせろよ…」
呻いたニックに、カーリーのほうが吃驚したようだ。
「こんなこと頼むなんて、変よ、兄貴」
「ああ、お前にイカれてる」
ベッドでの睦言は億劫だが、女の子は気を許すものだ。
カーリーも、ニックが再び膝に手を置いたら、力を抜いた。
ニックが嘆息する。
「クソ。お前、良く今までバージンでいられたな」
狼はありとあらゆる方向から攻めてくるんだ、もっと守備を固めねえと。
「どっかの誰かさんが、いるから。遊び目的で近寄ってくるヤツは、いないの。兄貴のせいで、ずっとバージンかも……、そうなったら責任取って」
「ああ…、いいぜ」
――望むところだ。
カーリーのモノはまだ毛も生えておらず、”コドモ”らしく小さくてピンクだ。
舌先でまず零れている愛液に触れさせ、舐め取る。
お前の味は美味しいぜ、と言おうとして、初心なカーリーを慮ってやめる、今夜のところは。
舐め取って綺麗にし、気になって仕方がない処女膜の穴から視線をもぎ離し、舌先で敏感な粒を突付いた。
唇だけで襞を挟んで、舌先で辿る。
「やだ」
「何が、嫌だ?」
「だって兄貴、やらしいんだもん…」
ニックは笑顔になり、また続けてやった。
カーリーは仔犬のように鼻を鳴らしたが、どうやら上り詰めはしないようだった。
まだ、イカねえのか……可愛いな。
独りごちて、ニックはカーリーを抱き締めた。
少し汗ばんで、ソープの匂いと体臭が交じり合ったまま、肉体をぴったり合わせる。
ニックは、もう初体験は疾うに済ませていて、カーリーのすべてが欲しかったが、まだ迫る時ではないとも分かっていた。
次の朝、カーリーのベッドのシーツが洗濯に出されているのを見て、ニックはニヤニヤする。
疑われもしない、カーリーはキレイ好きで週二回は洗濯に出しているからだが、今はもう、そうじゃない。
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past
3
両親が二人でディナーで、帰宅が昔なら二人が寝ていなければならない遅くになる夜なんか、ニックは上機嫌そのもの。
そういう夜は、カーテンを閉めていれば、居間のソファでいちゃつけると思っていた。
うっかり映ったセクシーなビデオでも見ているうちに、堅物の妹の股も緩むかも知れないから。
「ニック、あたし、変な気分になってきちゃった…」
「じゃあ、いいか?」
「もう、結婚まで処女なんてムリ…、今すぐ、されたい…」
普段なら絶対に有り得ないが、ソファで横たわってカーリーは全裸になって身悶える。
「親父やお袋がいるところなのに、こんなトコで抱かれて、いいのかよ」
「だって、感じちゃって、我慢できないんだもん……っ」
想像の中では艶めかしく、カーリーのほうから強請るのだ。
「あ、あん……、もうダメ…っ、焦らさないで、早く入れて……!」
だから座って待っていたのに、カーリーはキッチンのテーブルに座って、勉強中だ。
「映画、見ようぜ。好きだろ、レオン、やってる」
「兄貴も勉強した方がいいよ、期末テストじゃない」
ママに五月蝿く「出かけないように」と注意されても、真面目に頷いている。
そしてパパが言う、「カーリー、見張っているんだぞ、アリバイを作ったりしちゃ、ダメだからな」
それを聞いたときのニックの含み笑いときたら、憎たらしい。
「ウルサイ親がいないってのに、勉強か?」
「だから、頭いいの。謎が解けた?」
「ったく」
ニックはテレビを消し、カーリーの後ろに回った。
頭の天辺にキスして、柔らかな癖毛を撫で、伸び始めた髪を除けて、項に吸い付いた。
「ちょっと」
頭を横に動かして、カーリーはニックの淫蕩な行いを避ける。
「やだ…、パパもママも良くいる所で? こんなとこで出来ない」
「じゃあ、部屋に行こうぜ」
「あたし、勉強したいの。こんなことばっかしてたら、頭が悪くなっちゃう」
そこでカーリーは、良いことを思いついてニックを振り返った。
「――そうだ、兄貴の見てあげる、座って!」
そんなことをするくらいだったら部屋でマスを掻きたかったが、仕方なく隣の席に座った。
カーリーの広げている教科書とノートを一瞥し、彼女だけを眺める。
ニックに訊きながら説明するカーリーの横顔を見ながら、すぐに悪戯を思いつく。
短パンを穿いている腿に手を置き、内股を柔らかく撫で回した。
「ニック…!」
カーリーが注意すると同時に、ズボンに包まれてる秘密の場所を手で押さえてしまう。
手で少し強めに全体を揉み上げ、
「あ…」
カーリーが感じ始めたところで、短パンと下着の中に手を入れ、既に潤っているソコを指先で優しく捏ねる。
「やだぁ…、こんなとこでイタズラしないで……っ」
「何で。お前、濡れてるぜ」
ニックは小柄な身体を抱え上げて、テーブルの上に勉強道具を床に払い落として、カーリーを仰向けにする。
「ダメ、みんなで食事するところなのに!」
ショートパンツごと下着を引き摺り下ろし、上に載って乳首を弄りながら、片手でカーリーの襞を摩擦する。
「でも感じてんだろ? こんな家族ダンランの場所で兄貴にいかされちまうトコ、想像して」
「違……」
でも言葉に反して、カーリーはもっと濡れている。
ニックは耐え切れなくなり、自分のズボンの前を開けてペニスを取り出し、カーリーの脚を大きく開かせた。
「――ファックしてやる。食事するとき、このテーブルでヤラれたこと、思い出せるだろ」
「そんなの、いやぁっ……あぁん! 兄貴のが、入っちゃうよぉ……!」
「ちょっと、ニックってば。聞いてんの!?」
ニックは我に返って、カーリーを見て、目をパチパチさせる。
「もうっ、期末の点数悪かったらまた補習なんだよ、嫌でしょ?」
「ああ……」
ニックはズボンでテントを張った股間に苦労しながら、教科書を手に取った。
さっき……秘所を押さえようとした時、カーリーがその手をもぎ取ってテーブルに出させている。
怒られたのだ、痛恨の一撃――『ダメって言ってるでしょ? そんなことするなら、もうしないからね』
つまり、全部は妄想。
だが、思春期の今が盛りの男子にとっては好きな娘の肉体――柔らかくて、温かくて、良い匂いがするカーリーの躯――がすぐそばにあって、この状態は耐え難く、ニックは立ち上がった。
「ニック?」
「部屋にいる」
小走りで部屋に駆けて行くニックの背にカーリーが怒鳴る。
「何なの、もう! 教えてあげてんのに!」
――――――――――――――
数日、二人とも時間が合わない。
妹は記者同好会に所属して、記事を書くために徹夜し、ニックはフットボールの選抜試合。
急いで帰って来ても、カーリーは記者同好会の同級生のがり勉男子と仲良く勉強会なんかやっていて、その男は明らかに、ニックの大事な妹に気がある。
その上、両親の帰りが早い日が続いたりすると、ニックの欲求不満は頂点に達する。
たまの休み、両親が二人ともいて、カーリーに目配せしても冷たく肩を竦められるような日。
ニックはソファにいる妹に、クッションを投げた。
「ドライブ、行こうぜ」
「いいけど…」
両親は貞潔な妹が一緒ならと、喜んで父親の車を使うことを了承し、送り出してくれた。
「ねえ、どこ行くの?」
「まあ、適当に」
カーリーは助手席で、行儀悪く座席に脚を上げて、ニックを振り返った。
「最近テストの点数上がったって、ママが喜んでた」
「ああ…、お前が見てくれるからな」
カーリーが微笑んで、また前を向く。
その横顔が喜びに溢れているのを見て、ニックは成功しそうだ、と思う。
行くとしたら、季節外れのキャンプ場や、大規模階層駐車場の、人目に全然つかない薄暗い片隅。
「お前、好きな男子とか、いんのか?」
「いないよ。兄貴を怖がって誰も近寄ってこないし……、兄貴こそ、好きな子できた?」
「バーカ」
いるだろ、目の前に。
「あたし、大学は絶対都会にするんだ。都会に行きたいの、兄貴は?」
よし、大規模階層駐車場にしようじゃないか。
「フットボールで入れるトコ」
巨大モールか、映画に行くか、もしくは綺麗な夜景が見られると思っていたカーリーは、不満そうにシートベルトを外した。
「何で、ここ入ったの? 何があるの? お化けとか?」
ニックは、不機嫌になってドアのロックを外そうとするカーリーに腕を伸ばして、それを止めさせる。
「決まってんだろ」
「え…」
低く囁いたニックに口づけられ、カーリーの動きが止まる。
キスは、嫌いじゃないから。
ニックのキスはいつも合わせてくれてて、甘い――だが、ニックの手がカーリーのTシャツの下に潜り込んで来て、彼女は目を見開いた。
「やめてよ!」
「カーリー…?」
カーリーに突き飛ばされて、ニックが訝しげな顔をしているのがなおのこと許せなかった。
「何なの、それ…っ、ここにヤリに来たの…!? こんなとこに……」
ニックの手を払い除け、シャツの裾も元に戻して、ドアの方に身を寄せ己の両手で身体を抱いた。
「信じらんない…」
「……、嫌ならしないぜ、ただ…、最近、ずっと……なかったから」
最近ずっと、親がいて――触れなかった、だから。
欲求が溜まっちまって、それで。
「だから、ドライブに誘ったわけ? 最悪……!」
吐き捨てるように言うカーリーに、ニックがどもって返す。
「…ホテルなら、いいのか? ちゃんとしたホテルを取れば―…」
するのか?
言外の問いに、カーリーは大きく首を振る。
「やだ、もう…っ、早く帰ってよ、家に戻って!」
「――分かった。戻りゃ、いいんだろ」
ニックは両手を上げて降参の意を示し、ギアを入れた。
仕方なく、またパーキングを出るしかない。
三十分もいないで出てきた若いカップルに、駐車係は興味本位の視線を向ける。
カーリーはこれ以上ないくらい窓際に寄り、窓の外を見ている。
だから、ニックは何度もカーリーを盗み見ていた。
「悪かったよ…、断りもしないであんなとこ行って――そんな怒るなよ、俺はお前に、触りたかっただけだ…」
ニックは目の前の道路を見ていたが、信号と渋滞で止まり、車内を気まずい沈黙が満たしていた。
またカーリーを見て、ニックは息を飲む。
今まで後頭部を見ていたが、薄闇でカーリーの顔が窓に映って、頬を涙が伝っていた。
「カーリー……泣いてんのか?」
手を伸ばして肩に触れると、カーリーがびくりとした。
「いやだ。しない」
「違う…、何で、泣いてる…? 俺が、あんなとこでしたがったからか? もう……俺が、触ったりするの、嫌になったのか? 変だって、思うように…」
当たり前だ、いつかこうなるんじゃないかと不安だった、だから――。
だが、カーリーは何度も首を横に振っている。
「兄貴から誘って出掛けるのなんて、久しぶりだから楽しみだったのに、こんなのって……っ、もうやだ…!」
「――…」
ニックは予想外のセリフに唇を噛み、
「悪い……、俺は…、お前のことずっと考えちまって、それで二人になりたかった。お前……嫌がってただろ? 親に俺のお守り押し付けられて、休日出掛けるなんてゴメンだって…」
「そんなヤリたいなら、他の女の子誘えばいいでしょ? あたしじゃなくて…っ、妹なんだよ?」
「バカ言うな。お前のこと…、愛してんだ。お前が俺とデートしたがるなんて、思ってなかったんだよ」
「あたしだって兄貴のこと、愛してる。だから慰めたかったけど、でも…こんな、カラダだけみたいの、嫌だ」
「カラダだけ? クソッ! 俺が欲求不満だから、妹に触ってると思ってんのか……!?」
ニックがハンドルを殴って、カーリーが目を瞑ってまた一筋涙が流れた。
ニックは己の口に手を当てて、初めて真情を吐露する。
「お前を、触ってるときしか独り占めできないからだ。退屈な話したりするより、ヨガらせりゃ、お前も一緒に居たがる。気持ち好くさせれば……」
「何それ…。そんな淫乱じゃないよ、気持ちいいからついてくとか、そんなんじゃない」
カーリーは気が抜けたような声で、呆れたように言う。
「分かってる、お前は淫乱じゃない…」
ニックが手を伸ばして、カーリーの手を握った。
「悪かった、もう、しねえから…どこか行くときはお前にちゃんと訊く、それなら、いいか?」
「ん…」
カーリーは兄の手に包まれた自分の手を見ていた。
「おごってやるよ、何か……、何が喰いたい?」
「ソフトクリーム」
「ああ、分かった」
ニックは安堵したように笑って、車のハンドルを切り、ドライブインを探し始める。
「カーリー、カラダだけなんて有り得ない。お前が好きなんだ、お前が望まなきゃ…」
聞こえないくらいの音程で言われたニックの言葉に、カーリーは前を見たまま頷いた。
「知ってる」
嫌な違和感がしたのだ――何なんだろう、これは。
良く知らないけど、痴話喧嘩みたい。
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